「幽霊の恩返し」

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大人も子どもも楽しめる創作絵本⑨




さとるの家の近くにお寺があります。結構大きなお寺で、お墓もいっぱい。




お墓は外から丸見えでいつもそのお寺の横を通ると、ふわんとお線香の匂いがしてきました。




怖がりのさとるは、お寺の横を通るのは本当に得意じゃない。




今は感染症が広がるのを抑えるために学校は臨時でお休みだけど、そろそろ学校が始まりそうで、そうなったらまたお寺の横を毎日通らなきゃならないから、ちょっと嫌だなと思ってました。




今日はたまたま、さとるはお父さんと歯医者さんへ。帰りにこのお寺の横を通りました。




お寺のお墓の中で誰かが話しをしているようです。




「みんないいわね!しょっちゅう家族がお墓の掃除に来てくれて。私のところなんて一年に一度よ。ねぇ、田中さん?」




「そうよね、渡辺さん!私のところは、お坊さんにお金を払ってて、掃除してるのはお坊さんよ。親戚なんて来やしない」




「いいな、みんな。私なんて、もう200年近く誰も来てくれていないよ」




「そうなの?お富さん?」




よくよく聞いてみても、何の話なのかよく分からなかったので、お墓も怖いしさとるは気にしないことにしました。気になるけど。




3日後、さとるはお寺の横の道を散歩のために通りました。




この間の会話が気になるので、お墓の中を見てみると・・・。誰もいないけど会話してる!?




「法事もこないね、田中さん・・・」




「お墓参りも誰も来ないね、渡辺さん、お富さん・・・」




「どうしたんだろうね・・・」




「感染症が広がらないようにだよ」




事情が分かっていたさとるは、つい話しかけてしまいました。




三人はびっくり!!
「あんた見えるの?私たちのこと」




「・・・・・?え?」




「・・・私たち、幽霊だよ」




「・・・えぇぇぇぇぇ!!!」




さとるは頭がパニックになりました。




でもとにかく三人が見えるのでさとるは




「うん、見えるんだよ。三人とも見えるんだよ。なんでかな?」




「そんなのわかんないね」




とそっけない返事の渡辺さん。




なぁんだと、さとるは思いましたが、案外幽霊らしい返事ではなかったのでちょっと怖さはなくなりました。




「でも、だから誰も来なかったんだねー!田中さん!」




「そうね、渡辺さん、お富さん」




「私は200年誰も来ないから、二人のことが心配だったから」




とても仲の良い三人らしく、その後もずっとぺちゃくちゃお話していました。
さとるに三人が見えることを、気にもしないで・・・。




何か淋しくなってしまったので、さとるが家に帰ろうとしたところ




「あんた、ありがとうね!」と渡辺さんが声をかけてきました。




「あ、はい・・・」




「何かお礼しなきゃね。私たちができることと言えば・・・、まあ一週間先の未来の話をするくらいかな」




「未来が分かるの?」




「一週間よ。ね!田中さん!」




渡辺さんに促されて、田中さんは一週間先の未来の話をしてくれました。




この先一週間後に大雨が降る。
そうしたらここいら一帯は床下浸水するから、それなりの備えをしておいた方がいいよ。
そんなお話でした。




半信半疑だったさとるは、家に帰っても誰にも言わないでいました。




そして、6日後のお昼。




外出自粛が続いていたので、お母さんは家族三人、3日分の食材を買いに出かけようとしていました。




さとるも一緒に行って荷物持ちをします。




いつもならお母さんの後をついて回るだけですが、今日はなぜか買う物をさとるも一緒に見て、次々カートの買い物かごの中に放り込んでしまいます。




「さとる・・・、そんなに買わないよ」




「えぇー、お母さん買ってよー」
さとるは自分でもなぜ、そんなことを言うのかわかりませんでした。




そうして沢山の食べ物を買った次の日は、朝から大雨でした。




天気予報では午後は小雨になる予定でしたが、思った以上に雨は止まず、どんどん降り続いています。




テレワークしているお父さんが何気なくスマホでニュースを検索すると、さとるの家の近くの川が決壊しそうになっているということが分かりました。




それでも、まだ大丈夫、という雰囲気が家の中に何となく漂っていました。




そうして、夕方・・・。




「お父さん!!」




お母さんの大きな声で、ビックリしてお父さんとさとるはお母さんの居る玄関まで行きました。




気が付けば、玄関まで水が入ってきてます。




川が決壊してあっという間に、水が流れてきたようでした。




さとるのお父さんとお母さんは一晩、それ以上の浸水がないか確認しながら過ごしました。
さとるも心配しながら、夜を過ごしました。




翌日、玄関の水は引いたのですが、家の周りはまだ引き切らない水が残っていたりして、みんなで掃除しています。




お父さんとお母さんも玄関の浸水の後始末をしていました。




浸水の被害はそれほどでもなかったのですが、その後しばらくスーパーが品薄になりみんな不安な数日を過ごしました。




さとるはお母さんに「あんたがたくさん買って欲しいっていうから買ったけど、正直良かったわ!!ありがとうね!」とお礼を言われました。さとるは嬉しくなりました。
そして、あの幽霊たち大丈夫かな?と、ふと心配になりました。




数日して、浸水の被害もだいぶ落ち着いたので、さとるはあのお寺の墓場まで行ってみることにしました。




会話は聞こえません。
幽霊たちはいませんでした。




何となくお墓を見て回ることにしました。
田中さん、渡辺さん・・・同じ名前の人はいっぱいいました。




一つやたら古くて周りが草ボーボーのお墓があり、その名前を何気なく見ると難しい漢字がいっぱい書かれていましたが、一つだけ「富」という字を見つけました。




「ん??」




「富」の字が目に留まったさとるは、両隣のお墓を確認しました。




「渡辺さんと・・・田中さんだ!」




3っつ並んだお墓は、あの幽霊たちのお墓のようです。




さとるは一つずつ手を合わせて「ありがとうございました」と、きちんとお礼を言いました。




特にお富さんのお墓は、周りが雑草で大変だったので、少しだけ草むしりをしました。




不思議な不思議なさとるの体験したお話です。

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